- 新たな診療取り組み
動体追尾強度変調放射線治療(IMRT)とは
がんに対する放射線治療は外科治療と同様「治る」ことが期待できる治療法です。放射線を多く当てると効果は高くなりますが、腸管や神経などの正常組織と接するがんでは副作用をおこしてしまうため、従来の方法では多くの放射線を当てることができませんでした。
新規の照射法である強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy:IMRT)という方法では、放射線の強さを細かく変化させることで正常組織への線量を抑えつつがんに対しては十分な線量を投与することができます。
従来の照射法
IMRTでの照射法
しかし、照射中に動きがあるとがんに十分な線量が当たらなかったり正常組織に高線量が照射されてしまったりするため、動きの大きい肺がんや肝がんでの適応には限界がありました。
腸への高線量を抑えている
がんも腸も上方へ移動し腸が高線量域に含まれている
そこで当院で2016年4月より開始している、動くがんを追いかけながら治療する動体追尾照射とIMRTを組み合わせることで肺がんや肝がんでも動くがんだけにピンポイントで高線量を照射することが可能となりました。
動体追尾照射は当院で導入している治療装置Vero4DRTに搭載されている機能で、動くがんの位置をリアルタイムに確認しながら追いかけて照射する機能です。
Vero4DRT
動体追尾照射イメージ
動体追尾照射とIMRTの組み合わせは、副作用が少なく効果の高い究極の放射線治療を実現します。
治療のながれ
準備:CTシミュレーション(1時間半)
毎回の治療で同じ体位になるよう体を固定する型を作ります。その後、呼吸によって動くがんの位置を正確に同定するために、呼吸周期にあわせて画像を取得できる4DCTを撮影します。
CTシミュレーションの様子
治療計画・検証(1週間〜10日)
撮影したCT画像上で最適な治療計画を作成し、計画通りに正確に放射線が当たることを確認するための検証を行います。
治療計画
治療(1回あたり30分〜1時間)
病変の部位・大きさに応じて4回〜16回程度に分けて治療を行います。
X線写真で骨構造に基づいて1mm以下の精度で位置合わせ後、呼吸周期とがんの位置を確認した上で照射を行います。照射中は常にがんの位置がずれていないことを確認しながら治療します。
治療前の確認
治療中の様子
高精度かつ苦痛や不安の少ない治療を実現するため、放射線治療医、診療放射線技師、医学物理士、看護師がチームとなって治療を行っています。
放射線治療医、診療放射線技師、医学物理士、看護師のチーム
本治療を希望される方へ
当院では2018年11月より動体追尾IMRT治療を実施しています。他に転移のない肺がん、肝がん、膵がんなどが本治療の適応となります。希望される場合は主治医を通じて当科外来にご相談ください。