対象とする主な疾患

副腎、腎臓、尿管、膀胱、前立腺、尿道、陰茎および精巣など陰嚢内容に関する疾患を対象にしています。前立腺がん検診(PSA検査)異常に対する精査も行います。

腎癌

腎臓

腎臓は、そら豆の様な形をしていて、背中に左右1対ある臓器です。主な働きは、血液から、老廃物や余分な水分のろ過及び排出を行い、体液の恒常性を維持することです。この腎臓に、画像検査などで腫瘤が認められた場合は、大半は悪性であり「腎癌」を念頭に置いた治療計画が必要になります。
従来の古典的三大症状(血尿、側腹部痛、腫瘤触知)により発見される腎癌は非常に進行したものが多く、きわめて予後不良でしたが、最近では画像診断の進歩により早期に診断される症例が増加し、ほとんどが無症状です。
腎癌が疑われたなら、腫瘍の広がり(局所浸潤・転移等)を調べる検査[超音波検査・CT・MRIおよび骨シンチ]を行います。

症状

従来の古典的三大症状(血尿、側腹部痛、腫瘤触知)により発見される腎癌は非常に進行したものが多く、きわめて予後不良でしたが、最近では画像診断の進歩により早期に診断される症例が増加し、ほとんどが無症状です。

診断

腎癌が疑われたなら、腫瘍の広がり(局所浸潤・転移等)を調べる検査[超音波検査・CT・MRIおよび骨シンチ]を行います。

治療

1.手術療法

従来はすべて開腹手術が行われていましたが、近年ではより侵襲性の低い腹腔鏡下での手術が主流になっています。また、最近では、小さな腫瘍(4cm以下)では、積極的に腹腔鏡下での腎部分切除術を取り入れています。2016年よりダビンチを用いたロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術を実施しています。ただ、腫瘍が非常に大きい場合や、腎機能が低下している場合は、手術の安全性を期して開腹による根治的腎摘除術に変更する場合もあります。また腎細胞癌の特殊な進展様式として静脈内に塞栓を形成するようなタイプの腎細胞癌もあり、血管外科との協力で手術を行っています。

2.分子標的薬

主に転移のある腎癌に対して全身療法として行われます。分子標的治療薬は、癌細胞に特有なタンパク質などを標的とすることで癌細胞のみに作用することを目的とした新しいタイプの治療薬です。癌細胞のみを標的とした治療薬ではありますが、分子標的薬特有の副作用があるため、副作用対策が重要となります。当院では医師、看護師、薬剤師などが連携し、それぞれの専門性を生かした患者支援を通じて副作用低減を目指しています。

3.がん免疫療法

当院では2017年1月より「ニボルマブ(商品名:オプジーボ)」、2019年1月より「イピリムマブ(商品名:ヤーボイ)」による治療を開始しました。詳細については担当医より説明させていただきます。ニボルマブおよびイピリムマブは効果が期待できる治療薬ですが、これまでの抗癌剤と異なる特徴的な副作用が現れる可能性があります。当院では各診療科と連携を図り、安全に診療が行える様に努めています。

膀胱癌

膀胱

膀胱は下腹部にある臓器で、腎臓から流れてくる尿を貯め、充満すれば収縮し尿を排出する働きがあります。膀胱の壁は三層(粘膜、粘膜下層、筋層)から構成されており、この外側は脂肪組織に覆われています。膀胱癌とは、この粘膜上皮から発生する癌であり、進行するにつれ粘膜、筋層および周囲脂肪組織の順に浸潤していきます。一般的に膀胱癌は高齢の男性に多くみられる病気で、(男性が女性の約3倍と言われています)喫煙・特定の薬物や色素などへの接触も危険因子とされています。

症状

痛みなどの症状を伴わない血尿で発見されることがしばしばで、排尿困難や頻尿を認める場合もあります。

診断

尿検査や超音波検査に加え、膀胱の内視鏡(膀胱鏡)を行って診断します。その他、癌の進行程度(病期)を調べる検査として、CT、MRIおよび骨シンチなどがあります。

治療

手術には、内視鏡手術(経尿道的膀胱腫瘍切除術)と開腹手術(膀胱全摘除術)とがあります。まず、癌であるかどうか、腫瘍の深さをみるため内視鏡手術を行います。表在性癌(浅い癌)であれば、内視鏡手術のみで治療可能となりますが、浸潤癌(根が深い癌)では、さらに追加の治療(腹腔鏡手術、開腹手術、抗癌剤治療および放射線治療)が必要となります。腹腔鏡手術では2018年よりロボット支援腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術を実施しています。手術は、男性では膀胱と前立腺とを、女性では膀胱と子宮、膣との一部分をあわせて切除します。また、膀胱を切除してしまうと尿の通り道がなくなるため、新たな道を作成することが必要となります(尿路変向術といいます)。

尿路変向術

1.尿管皮膚瘻

左右の尿管をお腹の前面に導き固定し、出てくる尿を採尿袋で受けます。

2.回腸導管

小腸を遊離して、これに両側の尿管をつなぎ、小腸の一方端をお腹に誘導する方法であり、これも採尿袋が必要です。

3.新膀胱

小腸で膀胱に見立てた袋(新膀胱)を作り、これに両側の尿管および尿道とつなげる術式です。もっとも自然な尿の流れとなり、自力で排尿が可能でお腹に採尿袋をつける必要がありません。ただ、尿が漏れることや、排尿がうまくできなかったりすることもあります。

抗癌化学療法

浸潤性癌のうち、特に病変が進行していて、手術のみでは根治が難しい場合などは、抗癌剤を用いた治療も行っています。

がん免疫療法

当院では2018年1月より「ペンブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)」による治療を開始しました。主に転移のある膀胱癌に対して、抗癌剤治療を行い、その治療が効きにくくなった患者さんが適応となります。詳細については担当医から説明させていただきます。

前立腺癌

前立腺

男性のみに存在する生殖器で、膀胱のすぐ下で尿道を取り囲むかたちで存在しています。主な働きは精液の成分を造成し、射精における収縮や尿の排泄なども担っています。前立腺にも悪性腫瘍(いわゆる前立腺癌)があり、加齢とともに発生頻度の増加がみられ、その多くは60歳以降に認められます。また、日本の男性における癌死亡原因の4.2%を占めており、非常に身近な癌と考えられます。

症状

早期の前立腺癌の多くの場合に自覚症状がありません。尿が出にくい、排尿回数が多いなどの症状が出ることもあります。進行すると、上記のような排尿の症状に加え、血尿や骨転移による骨の痛みが見られることがあります。

診断

血液中のPSAという物質を測定するPSA検査が前立腺癌を早期に発見するための有効な検査です。PSAは前立腺に肥大や炎症があっても上昇することがあります。そのため、前立腺の触診や超音波検査を組み合わせ前立腺癌の可能性を検討します。前立腺部のMRIを行うこともあります。前立腺癌の疑いがある場合は、最終的な診断のために前立腺生検検査を行います。前立腺癌が認められた場合には癌の進行程度(病期)を調べるためにCTや骨シンチを行います。

治療

1.手術(ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術)

ダビンチシステムを用いて腹腔鏡で前立腺を摘出する方法です。手術療法は、最も根治率の高い治療法でありますが、術後、しばしば尿失禁(尿がもれること)、性機能障害(勃起不全)等認め、患者さんのQOLを低下をもたらします。ただ、約8-9割程度の方における尿失禁は、徐々に軽快し術後1年目で、ほとんど消失します。一方、性機能に関しては、希望に応じて勃起神経を温存する方法も行っています。ロボット支援腹腔鏡手術は従来の手術と比較して出血量が少なく、小さな傷で行えるため痛みも少なく、早期の社会復帰が可能です。

2.放射線療法(外照射療法)

体外から放射線を照射し、癌を攻撃する治療法です。

3.内分泌療法:ホルモン療法

前立腺癌は男性ホルモン(テストステロン)により増殖するため、このホルモンの働きを抑える治療法です。治療は、リンパ節や骨などに転移がある症例や、高齢で手術が困難な症例が適応となります。

4.抗癌化学療法

内分泌療法でも抑えきれなくなった前立腺癌に対する症状緩和や進行抑制を目的として行います。

腎盂・尿管癌

腎盂・尿管は、腎臓で生成された尿の通り道であります。ここに腫瘍が発生した場合に腎盂尿管癌となります。また、腎実質に発生する腎癌と腎盂に発生する腎盂癌は、まったく別であり、治療法も大きく異なります。しかし、膀胱は腎盂、尿管と同じ尿路上皮という組織であるため、腎盂癌、尿管癌、膀胱癌は同じ分類と考えられます。

症状

最も多い症状は肉眼でも分かる血尿です。腫瘍や血液などで尿管が塞がると、水腎症という腎象に尿が溜まった状態となり腰や背中に痛みを感じることがあります。水腎症が長く続いた場合には腎臓が機能しなくなることもあります。

診断

尿検査や超音波検査に加え、腹部レントゲン検査(CT、排泄性腎盂造影、逆行性腎盂造影)にて尿管・腎盂の形状を精査します。これにても診断が付かない場合には、麻酔下で内視鏡検査(尿管鏡検査)を行う必要があります。その他、癌の進行程度(病期)を調べる検査として、CT、MRIおよび骨シンチがあります。

治療

1.手術療法

転移がない場合は、基本的に手術療法になります。最近では、従来の腹部を大きく切開した開腹手術ではなく、内視鏡鏡下での手術を行っています。ただ、腎から尿管を摘出する必要があるため、下腹部に切開(約7cm程度)が必要となります。

2.抗癌化学療法

浸潤性腫瘍で特に病変が進行していて、手術のみでは根治が難しい場合、当院では抗癌化学療法を積極的に行っています。

3.がん免疫療法

当院では2018年1月より「ペンブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)」による治療を開始しました。主に転移のある腎盂・尿管癌に対して、抗癌剤治療を行い、その治療が効きにくくなった患者さんが適応となります。詳細については担当医から説明させていただきます。

副腎腫瘍

副腎

副腎は腎臓の上方に存在する数cm臓器で、血圧を調整するホルモンをはじめ多種のホルモンを分泌しています。

副腎腫瘍

副腎の腫瘍はほとんどが良性ですが、特に大きなサイズのものでは癌(副腎癌)の可能性があります。分泌されるホルモンにより高血圧など多彩な症状を示しますが、検診等で偶然発見される副腎腫瘍も増加しています。これらのうち、ホルモン産生を伴わない非機能性腫瘍に関しては、小さなもの(3cm以下)であれば定期的なフォローでよい場合もあります。
【ホルモン産生腫瘍】
1.クッシング症候群(コルチゾールの過剰分泌)
2.原発性アルドステロン症(アルドステロンの過剰分泌)
3.褐色細胞腫(アドレナリンの過剰分泌)

治療

侵襲性の低い腹腔鏡下での手術を行っています。

後腹膜腫瘍

後腹膜腫瘍

後腹膜腫瘍とは後腹膜腔という腹部後方に発生した腫瘍の総称で、比較的まれな疾患です。悪性腫瘍としては脂肪肉腫、平滑筋肉腫や線維肉腫などがあげられます。良性腫瘍としては、神経鞘腫、血管腫、脂肪腫や奇形腫などがあります。

症状

初期には症状現れにくく、周辺臓器を押しやるほど大きくなってから発見されることがあります。圧排された臓器により、腹部膨満、便秘、腹痛などさまざまな症状が現れます。

治療

手術による摘出、化学療法、放射線療法など組織型と進行度により治療方法が異なり、状況により組み合わせて治療を行ないます。手術は開腹手術または腹腔鏡下手術を行ないます。

尿膜管疾患

尿膜管

尿膜管は通常胎生期に存在する臍と膀胱をつなぐ管ですが、成長するにつれて消退します。しかし消退せずに残った尿膜管に、膿瘍や嚢胞、あるいは悪性腫瘍が発生することがあります。

症状

無症状の場合もありますが、臍から尿や膿が流れ出すことや、感染を起こすと発熱や腹痛が起こります。

治療

当科では低侵襲な腹腔鏡手術による治療を行なっています。適応となる患者様については、臍部に設けた手術用操作孔一箇所のみで手術を行なう単孔式腹腔鏡下尿膜管摘除術を積極的に行なっています。